2015年12月07日
言うもんだ
「ことしのお正月なんか、進ちゃんの来るのを、とっても楽しみにして待っていたのよ。鈴岡も、進ちゃんを、しんから可愛(かわい)がって、坊や、坊やって言って、い蟲草Cs4つも噂をしているのに。」
「腹が痛かったんだ、腹が。」しどろもどろになった。あんな事でも、姉さんの身にとっては、ずいぶん手痛い打撃なんだろうな、とはじめて気附(きづ)いた。
「それぁ、行かないのが当り前さ。」叔母さんは、こんどは僕の味方をした。滅茶滅茶(めちゃめちゃ)だ。「どだい、向うから来やしないんだものね。麹町にも、とんとごぶさただそうだし、私のところへなんか、年始状だって寄こしゃしない。それぁもう、私なんかは、――」また始めたい様子である。
「いけませんでした。」姉さんは、落ちついて言った。「鈴岡も、書生流というのか、なんというのか、麹町や目黒にだけでなく、ご自分の親戚のおかた達にも、まるでもう、ごぶさただらけなんです。私が何か言うと、親戚は後廻(あとまわ)しだ、と言って、それっきりなんですもの。」
「それでいいじゃないか。」僕は、鈴岡さんをちょっと好き個人化護膚儀器
になった。「まったく、肉親の者にまで、他人行儀のめんどうくさい挨拶(あいさつ)をしなければならんとなると、男は仕事も何も出来やしない。」
「そう思う?」姉さんは、うれしそうな顔をした。
「そうさ。心配しなくていいぜ。このごろ兄さんと毎晩おそくまでお酒を飲み歩いている相手は誰だか知ってるかい? 鈴岡さんだよ。大いに共鳴しているらしい。しょっちゅう、鈴岡さんから電話が来るんだ。」
「ほんとう?」姉さんは眼を大きくして僕を見つめた。その眼は歓喜に輝いていた。
「当り前じゃないか。」僕は図に乗って言った。「鈴岡さんはね、毎朝、尻端折(しりはしょり)して、自分で部屋のお掃除をしているそうだ。そうしてね、俊雄君が、赤いたすきを掛けてご飯の支度さ。僕は、その話を兄さんから聞いて、下谷の家をがぜん好きになっちゃった。でも、坊やだけは、よしてくれねえかな。」
「あらためます。」姉さんは浮き浮きしている。「だって鈴岡がそうから、私までつい口癖になって。」僕には、おのろけのように聞えた。けれども、それをひやかすのは下品な事だ。
「僕も悪かったし、兄さんだって、うっかりしてたところが糖尿病性黃斑水腫あったんだ。叔母さん、ごめんね。さっきはあんな乱暴な事ばかり言って。」と叔母さんの御機嫌もとって置いた。
「それぁ私だって、まるくおさまったら、これに越した事は、ないと思っていたさ。」叔母さんも、さすがに機を見るに敏(びん)である。くるりと態度をかえていた。「だけど、進ちゃんも、利巧になったねえ。舌を巻いたよ。でもね、あの、チョッピリだの何だのと言って、年寄りをひやかすのだけは、やめておくれ。」
「腹が痛かったんだ、腹が。」しどろもどろになった。あんな事でも、姉さんの身にとっては、ずいぶん手痛い打撃なんだろうな、とはじめて気附(きづ)いた。
「それぁ、行かないのが当り前さ。」叔母さんは、こんどは僕の味方をした。滅茶滅茶(めちゃめちゃ)だ。「どだい、向うから来やしないんだものね。麹町にも、とんとごぶさただそうだし、私のところへなんか、年始状だって寄こしゃしない。それぁもう、私なんかは、――」また始めたい様子である。
「いけませんでした。」姉さんは、落ちついて言った。「鈴岡も、書生流というのか、なんというのか、麹町や目黒にだけでなく、ご自分の親戚のおかた達にも、まるでもう、ごぶさただらけなんです。私が何か言うと、親戚は後廻(あとまわ)しだ、と言って、それっきりなんですもの。」
「それでいいじゃないか。」僕は、鈴岡さんをちょっと好き個人化護膚儀器
になった。「まったく、肉親の者にまで、他人行儀のめんどうくさい挨拶(あいさつ)をしなければならんとなると、男は仕事も何も出来やしない。」
「そう思う?」姉さんは、うれしそうな顔をした。
「そうさ。心配しなくていいぜ。このごろ兄さんと毎晩おそくまでお酒を飲み歩いている相手は誰だか知ってるかい? 鈴岡さんだよ。大いに共鳴しているらしい。しょっちゅう、鈴岡さんから電話が来るんだ。」
「ほんとう?」姉さんは眼を大きくして僕を見つめた。その眼は歓喜に輝いていた。
「当り前じゃないか。」僕は図に乗って言った。「鈴岡さんはね、毎朝、尻端折(しりはしょり)して、自分で部屋のお掃除をしているそうだ。そうしてね、俊雄君が、赤いたすきを掛けてご飯の支度さ。僕は、その話を兄さんから聞いて、下谷の家をがぜん好きになっちゃった。でも、坊やだけは、よしてくれねえかな。」
「あらためます。」姉さんは浮き浮きしている。「だって鈴岡がそうから、私までつい口癖になって。」僕には、おのろけのように聞えた。けれども、それをひやかすのは下品な事だ。
「僕も悪かったし、兄さんだって、うっかりしてたところが糖尿病性黃斑水腫あったんだ。叔母さん、ごめんね。さっきはあんな乱暴な事ばかり言って。」と叔母さんの御機嫌もとって置いた。
「それぁ私だって、まるくおさまったら、これに越した事は、ないと思っていたさ。」叔母さんも、さすがに機を見るに敏(びん)である。くるりと態度をかえていた。「だけど、進ちゃんも、利巧になったねえ。舌を巻いたよ。でもね、あの、チョッピリだの何だのと言って、年寄りをひやかすのだけは、やめておくれ。」
Posted by 至上勵合 at 18:39│Comments(0)