2016年03月16日
何だったのだ

「だから、もしかすると、その患者さんっていう人も、何かの理由で罪の意識に苛《さいな》まれてるのかもしれないわね。まあ、その辺は、あんたの水腫方が専門家だけど」
いいかげんな作り話で罪の意識を感じているのは、早苗の方だった。晶子に礼を言って電話を切ってから、彼女は考え込んだ。
カプランが、この言葉で示そうとしたものは、いったいろうか。
頭髪が蛇というイメージは、医学的に、どう解釈できるだろう。
無意識の罪悪感から、復讐を恐れる気持ちが働く。怒り、恐怖などが引き金となって、交感神経の緊張で立毛筋が収縮し、体毛が逆立つ。古語の『髪の毛太る』というのも、これに近い状態を表しているのかもしれない。
一方で、ギリシャ彫刻のメドゥーサなどの姿から早苗が連想するのは、人間の頭の中でとぐろを巻いていた危険な蛇、すなわち妄想、激怒、憎悪、攻撃への住宅設計欲求などが、今にも外に現れ出ようとする恐るべき瞬間だった。
早苗は再び、迷信じみた恐怖にとらわれた。高梨は、天使の羽音と囀りを聞いていた。彼をはるばるアマゾンから追ってきたのは、本当は、復讐の女神だったのではないのだろうか。
もう一度、カプランの手記に戻る。すると、「ついに "Eumenides" の正体を発見した。"Pseudopacificus cacajaoi" と命名する」という意味の文章にぶつかった。"Pseudopacificus cacajaoi" というのも、ギリシャ語かラテン語らしい。英和辞典を引いても、似た言葉さえ載っていなかった。だが、もう一度晶子に電話をかけるのは、さすがに気が引けた。
ふと、インスピレーションが閃《ひらめ》いた。これは、何かの生物に付与された学名なのではないだろうか。
早苗の生物学の知識は、高梨より少ないくらいだったが、それでも、二名法の学名の前半部分は属名で、後ろが種名だということくらいは知っていた。
パソコンを起動し、インターネットで検索をかけて、生物学のデータベースを探す。使用したキーワードは、"scientific name" や "biology" "zoology" などである。慣れない分野なので、なかなか見つからなかったが、ようやく、Biosis 社の生物の学名専用の検索エンジンを捜し当てた。
スペルを間違わないよう慎重に、"Pseudopacificus cacajaoi" と入力し、検索してみるが、そういう生物は存在しないという回答だった。念のために、唯一覚えている学名である、"Lynx lynx" で検索してみると、ちゃんと、オオヤマネコらしき説明が出てNespressoきた。だとすれば、"Pseudopacificus cacajaoi" なるものは、もしカプランの妄想でないとするなら、彼が発見した新種の生き物で、まだその名前は学会には登録されていないのかもしれない。生物種の宝庫であるアマゾンでは、多くの生物が絶滅する一方で、今日でも新種が次々と発見されているのだ。
Posted by 至上勵合 at 11:30│Comments(0)